どうすれば初級?
初級レベルは「事実や経験」を話すことが目的になるので、話しの論理的な構成はあまり必要ありません。起ったことを起ったように話すのですから当然と言えば当然です。ただ、「事実や経験」を話す場合にも日本語の意味を分解して細かく話す必要はあります。したがってこの初級のページではこの点に説明を限定し、「論理的な構成」の方は「中上級」のページにまわしここでは対象にしません。
英会話、また、リーディング、ライティングもそうですが、日本人は文法と語彙さえ知っているならば英語はマスターできる、と考えがちです。ですが、初級では文法や語彙に加えて次の4つが非常に重要になります。
1
一言で要約しないで、見たまま、聞いたまま、感じたままに細かく具体的に表現する手法
(日本語の意味分解) |
2
英語の基本ストラクチャー |
3
基本的な文法 |
4
語彙やイディオム 、構文
|
これからこの4つを簡単に説明します。
英語というと日本の公教育では文法や語彙だけが重要視され、それ以外の要素はまったく省みられないのが実状です。文法や語彙以外の要素が存在していることすら知らない人がほとんどです。この2つさえあれば英語は事足りると考えているのでしょう。
この2つが重要であることは間違いありません。しかし英語にはこれらとおとらず重要なことがあるのです。ここではこれを英語の基本ストラクチャーと呼びます。
英語には外国人がナチュラルだ、と感じる話し方があります。この話し方とはいわば話の流れのようなものです。それは、慣用句、本体、詳しい説明の3つの部分で、その流れにしたがって文を組み立てることを指します。これを図式化して詳しく説明しましょう。
基本ストラクチャー
慣用フレーズ
最初は慣用フレーズです。これは日本語の語尾にあたるもの、…と考える…と言っていた….と理解する、などです。すべての発話にかならず付けるというものではありません。必要に応じて付けたり付けなかったりします。
〜と思う |
〜と言う |
〜と感じる |
〜と信じる |
〜だと思う |
〜は〜に〜と言った |
I think 〜 |
I say 〜 |
I feel 〜 |
I belive 〜 |
I guess〜 |
I told him that〜 |
文の本体
次に、発話の本体があります。本体は自分の言いたいことの中心部で、いわば発話のテーマにあたる部分です。ここではできるだけ簡単な表現を使うことがルールです。I
have a penクラスの文で十分です。決して難しい単語や表現、また、文型は使わないようにしてください。下のA、B、Cくらいの文型を駆使します。
A
主語 + 動詞 〜は〜する |
I go. |
I drink. |
She sleeps. |
I look. |
I eat. |
He plays. |
I listen. |
I enjoy. |
I see. |
I shout など |
B
主語 + 動詞 + 目的語 〜は〜を〜する |
I play music. |
You eat hamburger. |
I enjoy golf. |
He drinks tea. |
We watch TV.など |
C
主語 + be動詞 + 補語 〜は〜だ There is {are} 〜がある |
I’m a boy. |
You are a nurse. |
My father is a doctor. |
She is my fiancee. |
There is a police box. |
There are many people.など |
詳しい説明
詳しい説明の部分は英語を話すときにもっとも重要な部分になります。英語は、すべてを一言で要約する日本語とくらべると、何から何まで細かく説明する具体的な言語です。発話の中では、本体のテーマをこの部分で詳しく説明します。日本人には一番苦手な部分になります。また、that、which
などの関係代名詞や関係副詞はやたらめったらと使うのではなく、適切に使うのが原則です。
A
前置詞 + 名詞
時間と期間 |
位置
|
関係 |
by までに
until(till) 〜まで
for 〜の間
at 〜に
since 〜以来
|
by 〜のそばに
near 〜の近く
in 〜で(大きな場所)
at 〜で(小さな場所)
to 〜へ
|
about 〜について
before 〜の前に
after 〜の後に
with 〜と、と一緒に
|
by eight
until I finish my work
for three years
at seven o’clock
since 1989
|
by the door
near my house
in Tokyo
at Tokyo station
to Disneyland
|
about my father
before the class
after work
with my friend
|
B
to不定詞 + 動詞 + (名詞)
(〜を)〜するために、(〜を)〜すること
to have lunch |
to cook dinner |
to get dressed |
to find an interesting job |
to sleep outside |
to play tennis |
to have fun |
to see a movie |
C
動名詞 〜ing
〜をしながら
sleeping |
eating |
talking |
looking |
having などの〜ing形 |
D
副詞
today |
home |
tomorrow |
abroad |
yesterday |
outside |
tonight |
insideなど前置詞がつかない名詞のようなもの |
接続詞
接続詞は先に紹介したbut, because,
and, so, ifの他にafter, before,whenの3つを合わせて使うと話が組み立てやすくなります。
しかし |
なぜなら |
だから |
そしたら |
そして |
But |
Because |
So |
Then |
And |
英語の発話
それではこの発話の形式ではどのような会話文になるのか実際にみることにしましょう。慣用フレーズ、本体、詳しい説明を抜き出しました。
赤 本体 青
詳しい説明 黒 接続詞
I played tennis at tennis court near
Yoyogi park with my friend from work yesterday.
本体 SVO 詳しい説明
私はテニスをした。 昨日職場の友人と代々木のテニスコートで
There are so many people in
Shinjuku station in the morning
本体 SVO 詳しい説明
たくさんの人がいる。 朝新宿駅には
My father said he visited his old
friend in Boston to talk about his future plans.
慣用フレーズ 本体 SVO
詳しい説明
私の父が言った。 旧友に会った 将来のプランについて話し合うためにボストンの
Noriko said she went to America to study Journalism in college for two years.
慣用フレーズ 本体 SV
詳しい説明
紀子が言った。 彼女は行った 大学で二年間ジャーナリズムを勉強するためにアメリカへ
He was a college student at Waseda University three years ago.
本体SVC
詳しい説明
彼は大学生だった。
三年前早稲田大学の
長い発話
次に、前のページの会話例を使って実際の会話で行われる長い発話をみてみましょう。慣用フレーズ、本体、詳しい説明を抜き出しました。
赤 本体 青
詳しい説明 黒 接続詞
レストランで
Yesterday, we had a dinner at a Chinese restaurant in Harajuku to celebrate my boyfriend’s
birthday. But the waiter spilled soup over
his lap. So my boyfriend called manager to
ask for the money to buy his new pants. But the manager refused to pay. Sohe got very angry and left the shop without
paying the bill.
一日の出来事
I had a terrible day today. I usually get on the 7:15 train. But today there was an accident at Shinjuku station and train stopped for 15 minutes. I had a very
important meeting with my client. So I got off
the train and took taxi to my office. But there
was a traffic jam and it took me two hours to get
to my office. Meeting was already over when I arrived.My boss got very angry and he scolded me for three hours.
旅行の思い出
My boyfriend and I went to Hokkaido this summer. We wentto Sapporo and stayed there
for two nights. Sapporo was a beautiful city and there were so many things to do there. So we stayed for another two
days. After that, we went to Asahikawa to do hiking at Taisetsu Mountains. But the weather wasn’t good and it was very
cold. So we changed our plan and went sightseeing around Asahikawa. Asahikawa was alright. But there weren’t many things to see, so it was a little boring.
基本ストラクチャーが理解してもらえたでしょうか。慣用フレーズ、本体、詳しい説明の各要素を効果的に組み合わせることで自分の言いたい内容をできるだけ細かく説明することができるようになります。これをツ−ルとして使いこなすことができれば、ネイティブが十分に理解可能な英語に自然となります。つまり、内容を一言で要約するのではなく、見たまま、聞いたまま、感じたままに話すことができるようになるということです。一生懸命、徹底的に練習すればなんとかなります。
しかし細かく説明することに慣れていないわれわれ日本人にとって、このようなツ−ルをいきなり使いこなすことは難しいでしょう。重要なこと
は、まず本体だけでよいから上で説明したような中学2年程度の簡単な文を長くつなげ、言いたい内容を細かく説明する練習を基本に行うことです。本体の部分
がしっかりできるようになるだけで、普通の日常会話には不自由を感じなくなるでしょう。そしてこれができるようになった後で、慣用フレーズと詳しい説明を
加える練習をして表現したい内容を一層細かく豊かにして行けばよいのです。外国人とのコミュニケーションはさらにスムーズとなり、細かな表現もできるよう
になるでしょう。
ここで「事実や経験」を表現するにあたって、初級から中級へと英会話力がどのように伸びて行くものなのか下に例を示します。
日本語
きのうのミスタージェンキンスの接待ゴルフ、雨にたたられてまいったよ。
本体のみの英語(初級レベル)
Mr.Jenkins came to Japan. Yesterday we went to Koufu country club . But it started raining. So we were all wet.
「詳しい説明」部分を豊かにした英語(中級レベル)
Yesterday we went to Koufu country club to entertain
Mr.Jenkins from Micron in Silicone Valley. But it started raining in the
middle of the game. So when we finished 18 holes, we were all wet to the
skins.
初級レベルでは基本ストラクチャの「本体」の部分に発話が限定されるのに対し、中級レベルでは基本ストラクチャの「詳しい説明」部分が豊かになり、よりこまやかな表現が可能になっています。正しい方法でトレーニングするなら、日本人の英会話力は、このように本体のみの会話からより細かく洗練された内容へと伸びて行きます。これはかならずしも語彙力と文法の知識の問題ではありません。英語らしい話し方のスタイルに慣れるかどうかの問題なのです。
では、英会話に本当に必要とされる語彙や文法、それに構文はどのようなものでしょうか?次にこれを見ます。
日本語がものごとを漠然と一言で要約することを好むのにたいし、英語はできるだけ細かく、そして具体的に内容を表現します。具体的であれば
あるほどネイティブにとって理解しやすくなります。語彙、文法、構文も具体的な表現を助けるものがもっとも使いでがあります。下にどのようなものが必要か
書きましたので参考にして下さい。
語彙
細 かくものごとを説明するのですから、名詞や形容詞ではなく、動詞が必要になります。日本語には一言言えば済んでしまう便利な名詞や形容詞が数多くあります
が英語にはありません。動詞をたくさん使って細かく説明するほかないのです。動詞はおぼえてもおぼえすぎることはありません。特に動詞化したイディオムが
使い手があります。
文法
文法は先に説明した通り、5文型などの基本文法が大事です。それ以外はあまり必要にはなりません。ただこの場合、時制がもっとも重要になります。時制には、在、過去、未来、進行、完了の5つがありますが、これは確実にマスターしたいものです。
また、基本ストラクチャーの詳しい説明のところで前置詞を多く使いますのでこれもマスターしましょう。
構文
基本文型で話せればさほど使うこともないのですが、知っていると便利ものがあります。ただ便利だからといって必要もないのにやたらめったら使うものではありません。比較的に使用頻度が高いものを下に列挙しておきました。
So that I can.
|
できるように
|
So that I won’t
|
〜しないように
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so〜that
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あまりに〜なので〜だ
|
as long as
|
〜しない限り(以上)、する限り(以上)
|
unless
|
〜しないと
|
even if
|
〜したとしても
|
even though
|
〜にもかかわらず
|
no matter how
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どんなに〜したとしても
|
more like A than B
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BというよりはAに近い
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as soon as
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〜するやいなや、〜し次第
|
これで皆さんも初級レベルに何が必要なのか理解いただけたのではないでしょうか?次に、もっとも大きな困難を乗り越えなければならない、中上級の実態を詳しく見てみましょう。