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はじめに |
最近では、日本人は英語のコミュニケーション力が特に伸びにくいというのが定説になりつつあります。皆さんもこれまで英会話のために相当な時間とお金を投資してはずなのに思ったように伸びていないと感じている方が圧倒的に多いのではないでしょうか?
英会話を学習するに当たって、知っておかなければならないことがあります。それは、英会話とは出身文化が異なった人との間に交わされるコミュニケーションの手段であり、この事実を認識して学習しないと英会話は伸びにくい、ということです。
一見するとこれは当たり前のことのように思えます。日本人とコミュニケートするのであれば日本語を使えばよいわけですし、英語を使わなければならない環境は外国人とのコミュニケーションに限定されます。私たち日本人が英語を使う状況は、出身文化が異なる人とコミュニケートする必要がある状況です。これは当たり前です。
では、出身文化が異なっているとはどういうことを指すのでしょうか?これは相当に難しい質問になります。多くの人は、考え方、価値観、習慣、風習が異なる、と答えるかもしれません。では、考え方や価値観が異なるとは具体的にはどういうことを指すのでしょうか?この問いにはっきりと答えられる人は意外に少ないのではないでしょうか?
この本は英会話の教材ですので文化の問題には深入りはしません。しかし、文化の違いを認識することは英会話力を伸ばすためにはとても重要なことです。ここでは必要最小限の解説を行います。
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集団の和を保つ |
まず始めに理解しておくべきことは、私たちの日本語文化の特徴です。日本語の文化の特徴は、集団の和を保ち、集団全体の調和を維持することにポイントがあります。このことから、日本語の文化では、集団としての全体性の維持が個人の自己表現よりも優先され、強い自己主張や他の人とは異なる考えを持つことは基本的にはばかられます。集団の規範に従って話し、行動することがどの場面でも求められます。
実は、私たちの文化のこのような特徴が、英会話を学ぶに当たって大きな障害となり、英会話の伸びを止めてしまうという事態が発生するのです。それがどのような障害なのか以下で具体的に説明しましょう。
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私たちの日常 |
私たちの日常生活は多くの「場面」で出来ています。「クラインアントとの交渉の場面」「友人との社交の場面」「家族との会話の場面」など私たちが日常出くわすすべての状況のことを「場面」と言います。私達は、時間の経過とともに、こうした様々な「場面」に出入りしている、というのが私たちの日常です。
さて、こうしたどの「場面」にも、それぞれ「立場」「使用されるべき言葉」「服装」「行動」などのルールが付随しています。私たちがそれぞれの「場面」に参加することは、私たちが場面の「立場」に一貫したルールで話し行動することを意味します。
例えば「クラインアントとの交渉の場面」を考えて見ましょう。この場面のあなたの「立場」は「営業マン」だったとします。ここではあなたは「営業マン」として行動し、それに見合った装いで、相手に失礼にあたらない敬語を使うでしょう。もしここで「営業マン」にはそぐわない、親しい友人に使う言葉、例えば「よう、元気?」などと挨拶したのなら、あなたは常識がないとみなされ、一人前の大人とは見られないでしょう。反対に、「親しい友人との会話」の場面で、「本日はお忙しいところお越しいただきありがとうございます。」などと挨拶したのなら、相手から水臭いと倦厭されるのではないでしょうか?